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あなたの暮らしのためになる(?)漫画原作者・猪原賽が発信する中央線ライフブログ

  • 12:00

【酒場思い出語り】東京都中野区「カッパ中野店」のもつ焼き

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 今回は中野の酒場、思い出話。「もつ焼き カッパ」中野店からお送りします。


「カッパ」と呼ばれるもつ焼き店は、吉祥寺と荻窪、そして中野にあります。
 吉祥寺と荻窪は常に満席で評判の店。中野店は入れない事はないけれど、そこそこお客は入ってます。

 そこそこ活気ある中野店、実はカウンターの中の焼き手さんは、元・荻窪店の常連さん。
 その人がここに来るまでは、中野店は閑古鳥鳴く寂しい店でした。

 数年前までの「カッパ 中野店」は、老齢なおやっさんが仕込みをし、カウンターの中で串を焼いているのは、外国人女性でした。
 彼女らは携帯電話を手にポチポチメールを打ちながら、店内のテレビを眺めながら、まったく串焼きに注意を向けることなく、無表情で無口で愛想もなく、その様子におやっさんがお小言を言っても聞こえないふり、日本語わからないふり。
 それに対しておやっさんが、常連客に愚痴を言う。客がおやっさんをまぁまぁとなだめる。

 最初店に入った時、この空気の悪さに失敗したなと思ったものです。
 1、2本食って、一杯飲んで、サッと帰ろうか……と、そんな外国人女性が焼いた串を食って、びっくり。あんなテキトーな焼き方してて、なんでこんなに美味いのか。
 それは仕込みのおやっさんの仕事がスゴかったからなのか、それとも外国人女性店員が度を越したツンデレなのか、それは今となってはわかりません。
 結局あれもこれもと、もつ焼きを頼み、酒を飲み、長居をしてしまった。

 客がいない寂しさ、外国人店員のツンぶり、おやっさんの愚痴、ボヤき。
 その雰囲気の中で食うもつ焼きの、異常なうまさ。
 それから何度となく通っていた私は、「これが上級者の酒場では?」と、やや中二病的発想でカッパ中野店を愛していました。

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 まだレバ刺しが普通に合法だった頃、もつ焼きのレバーを焼かずにそのまま生で提供される「レバ刺し」も、カッパの楽しみのひとつ。
 タレ・塩の2種類だけでなく、タレにくぐらせた上に塩をかける「タレ塩」レバ刺し串が、私のフェイバリット。もちろんその食べ方も、通っているうちに数少ない常連さんのオーダーコールから盗んで知りました。

 もつ焼きのみの一本気なこの店は、串しかないので箸は必要ありません。割り箸置いてません。お新香もありますが、それには爪楊枝が刺されており、それでちまちまと食べるスタイル。
 そのシンプルなカトラリーはドリンクにも適用され、当時酒を飲む器はグラスしかありませんでした。
 生ビール無し、サワー無し。ビールは瓶のみ。日本酒焼酎中国酒は、熱燗でも冷でもグラスでの提供。

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 とある晩、初めてカッパに来たと思しき酔っ払いのサラリーマン集団が、メニューも見ずに「チューハイ!」とオーダー。
 フロアに出て、常連客と語らっていたおやっさんは、「ウチにはそんなものねぇよ」と答える。
 するとサラリーマン達は「ねえって」「マジかよ」「失敗したな」ヒソヒソと、聞えよがしに文句を言う。
 その様子がおやっさんの癇に障ったんでしょうね。
「そんなに飲みたきゃ外行って炭酸買って来い」と言い捨て、サラリーマンも引っ込みがつかずに、部下とおぼしき男性ひとりにパシらせた。
 炭酸が届いたところで、サラリーマンは「買って来たぞ! 焼酎とジョッキくれ!」と勝ち誇ったんですが、上掲のとおり、当時カッパにはグラスしかなかった。
 おやっさんはなみなみと焼酎(ストレート)が注がれたグラスをドンと置いて、「ジョッキはない」。
 サラリーマンは「どうすんだよこれ……」と途方にくれ、少し焼酎すすってはソーダを注ぎ足す、気まずい空気。
 それを横目に、これもまた酒場の空気、おいしいつまみ――なんて思っていた私は、相当性悪だと思います(笑)。

 串はうまいが、そんな雰囲気。客が少ないのも当然な状況だったんですよね。
 ですが、しばらくカッパを訪れないでいた私が、ある時ふと扉の向こうを見ると、店内がわいわいと混んでいる。活気がある。
 え、何が起きたの!? こんなのカッパじゃない!! と、のれんをくぐると、若い男性が焼き手となり、外国人店員はいなくなっていた。

 詳しい事情は知りませんが、荻窪の常連さんだった方が新たに中野店の焼き手となり、おやっさんの血縁のお嬢さんがフロア係に。新体制となって営業していたのです。
 店内に活気があるのは、そんな焼き手の常連さんと仲が良かった荻窪店の常連さん達が、挨拶・様子見で来ていたからだった。

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 ――以降、お店の雰囲気は少しずつ変わっていき、やがてジョッキが置かれ生ビールもチューハイも飲めるように。
 油揚げなど新メニューも追加され、今では「カッパ中野店」、安くてうまい串で楽しくサッと飲めるセンベロ店として、毎晩活気がある様子が見られます。

 おやっさんの顔は滅多に見ませんが、調理用の割烹着を脱いだ私服の姿で、店の奥から出て来たのを見たこともあります。いまだに仕込みをしているか、それとも引退しているのかわかりませんが、外国人店員に愚痴をこぼしていたあの時の険しい表情もなくなっていて、なんだかホッとすると同時に寂しくなったりもして。

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 私の思い出の中の、ギスギスした雰囲気でガラガラの「カッパ中野店」で飲む。それを良しとしていた私は、ただの上級者きどりだったと思います。
 やはり酒場は、みんなで楽しく、わいわいと活気あるほうが元気になる。酒場に繰り出す理由になる。

 ただ、無表情で無口で、テレビに夢中で、おやっさんをシカトして、勝手にふるまう外国人女性店員の、なぜか美味いもつ焼き。寂れた酒場のツンデレ感。懐かしくも失われた中野の風景――

 ……あの外国人女性店員さん達は今何やってるだろう。それにおやっさんもここ数回見てないな。
 今も変わらずおいしいもつ焼きが食えるし、その点今の焼き手のお兄さんは信用してる。けれどおやっさんは健在だろうか。ちょっと心配。

【カッパ中野店 過去レポート】
店員が変われば店も変わる!しかしそれでも拭えない場末感に安心「カッパ中野店」のモツ串(2013年12月)
老舗もつ焼き酒場・中野「カッパ」新春恒例!”新年のご挨拶”いただいて来た(2014年1月)
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