- 2015年03月21日19:00
『スター・ウォーズ』ノ・ミカタ。 エピソード3:改竄された聖典
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前回「エピソード2」は、バージョン違いを含めると全22本に及ぶ『スター・ウォーズ』シリーズ、ファンの多くがこの長く険しい道を通って来た……という話だった。
今回は具体的にそのそれぞれでどのような改変がなされて来たか「スター・ウォーズのアップデートの歴史」を解説する。
1・旧三部作の公開
1977年に、最初の『スター・ウォーズ』が公開され、世界中で大ヒットを飛ばした。最初のアップデートは、続編の製作が決定した翌1978年、アメリカでリバイバル上映された際に、小さな変更があった。オープニング・タイトルに “Episode Ⅳ : A New Hope” と、追加されたのだ。
劇場初公開時に、それはなかった。壮大なサーガを低予算で作る際、ルーカスは、スタジオに三部作である事を意図的に隠して製作したからだ。
「本当はこうしたかった」と言うのが、アップデートの理由である。小さなアップデートだが、当時のファンに衝撃を与えるには充分だった。
「最初に見たのは、第1話ではなく、第4話だったのか!」
「つまり、この話の前に3話あるって事だよな!」
「今度の続編は第5話なのか!」
と、狂喜乱舞のファンたちに、ジョージ・ルーカスから、更なるな発表があった。
「スター・ウォーズは、三つの三部作からなる壮大なサーガである」
え!?
三つの三部作って……(えっと、さざんがぁ……)なんと! 9つもあるの!? 壮大すぎるぜルーカスさん!!
そして1980年にEp.5と、1983年にEp.6が公開され、ひとつの三部作が完結した。
ビデオ化され、レーザーディスク化され、TVの洋画劇場では、繰り返し放送された。ゲーム化されたり、スピン・オフの小説やコミックも出版された。
1996年、正式にEp.1の製作が発表された。この時、ルーカスは「これで、全6作が完成する」と、全9作を否定する発言をし、またもやファンを驚かせた。
2・特別篇の公開
1997年、大規模なアップデートが行われた。旧三部作をデジタルリマスター化した「特別篇」である。フィルムのノイズをデジタル処理で除去するだけでなく、当時の技術では不可能だった、不完全な合成部分を素材レベルまで遡って再編集し、数多くのシーンを修正した。当時の予算では実現できなかった、少ない通行人などをCGで増やしたり、いかにも被り物な宇宙人をCGにするなど、主に世界観を補強する改変がなされた。
また、撮影はしたが当時の技術では完成させられず、カットされた未公開シーンの追加もあった。中でも話題となったのは、Ep.6で初登場したジャバ・ザ・ハットが、Ep.4でも登場した事だ。そこでは賞金稼ぎのボバ・フェットも、チラリと姿を見せる。当時の技術では不可能だった、ジャバの歩く姿が見られると、話題になった。
また、モス・アイズリーの酒場でハン・ソロが、賞金稼ぎのグリードと出会うシーンでは、ハンが会話で時間を稼ぎ、いきなり撃ち殺すのだが、「特別篇」ではグリードが先に撃ち外し、ハンが撃ち返して殺すシーンに変更された。
他にもEp.5では、惑星ホスでルークを襲う巨大なワンパの全身を見せたり、治療を受けたルークが、見舞いに来たC-3POに対して、お礼を言うようになった。ルークがドロイドを友人として見ている表現が加えられている。
Ep.6では、ボバ・フェットがサーラックの「穴に落ちるだけ」の死に方だったが、巨大な口がCGで追加され、バクンと一飲みにされた。また、サーラックの触手もCGで増量されている。
また、ジャバの宮殿で歌われていた「妖しい歌」が、丸々別の「激しい曲」に差し替えられるなど「遊び心」ある追加や改変も多数行われた。
<旧・「ラプティ・ネック」>
<新・「ジェダイ・ロックス」>
他にも細かな部分で変更があり、ルーカスが当時、妥協せざるを得なかった部分を修正したのがこのバージョンだった。モノラルやステレオだった音声も5.1chのサラウンドになり、サウンドトラックも新しく録音された。
『特別篇』は、デジタル・リマスターだけでなく、新三部作への実験と、クォリティーの整合統一の目的もあったと思われる。
ファンは、新たな解釈の違いに戸惑いながらも、再びスクリーンでこのスペースオペラが見られた事を、概ね歓迎した。
3・新三部作の公開とDVD版
1999年より、新三部作がスタート。Ep.1が公開される。2001年、Ep.1のDVDがリリースされるが、ポッドレースの出場者紹介シーンが長くなるなど、ここでも改変が加えられている。
2002年Ep.2の公開後、同年にDVDが発売されるが、やはり改変があった。ジオノーシスの砂漠でトルーパーに救出されるパドメが、「大丈夫ですか?」と声をかけられた後に、“Yes.”と元気よく答えていたのが「う…う〜ん…」と、ちょっと痛そうになったりしている。
4・DVD版の旧三部作
2004年、ついに旧三部が初DVD化された。この時、劇場公開版が出るのか、それとも特別篇が出るのかと論争になったが、答えはどちらでもなかった。『特別篇』から、更にアップデートされていたのだ。まず、邦題が変わった。Ep.4では、単に『スター・ウォーズ』だったタイトルを『スター・ウォーズ/エピソード4:新たなる希望』と、日本語サブタイトルが付いた。
Ep.6では『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』から『スター・ウォーズ/エピソード6:ジェダイの帰還』に変わった。コレは原題が、もともと“Revenge of the Jedi”だったのだが、公開直前に“Return of the Jedi”に変更された事による。日本ではあまりの直前の変更に、ポスターやパンフレット、グッズの刷り直しが間に合わず『ジェダイの復讐』のタイトルで公開されたが、DVD化に伴い邦題も『ジェダイの帰還』に修正されたのだ。この辺りは、日本の事情によるのだが、変わったのは、タイトルだけではなかった。
『特別編』で追加されたEp.4のジャバ・ザ・ハットのシーンが、Ep.1に出て来たジャバに近いCGに変更されている。
上『特別篇』/下『DVD版』
(http://2.bp.blogspot.com/-GuqddJMlQ2M/USOK5emDk_I/AAAAAAAAA3Q/sxDOwsJZWjY/s1600/JabbaComparison.jpg)
ハンとグリードのシーンでは、撃ち返しの間隔が短くなった。
Ep.5では、ホログラムのみの登場だった皇帝が、新三部作で皇帝を演じたイアン・マクダーミドの映像に差し替えられた。
また撮影時のミスにより、カーボン冷凍直前にハン・ソロが着ていたベストが、CGで消されていた。
Ep.6では帝国が滅亡した際に、新三部作の舞台となったいくつかの惑星の様子が追加され、霊体となったアナキンが、ジェダイの騎士だった時代のアナキン、つまり新三部作の俳優ヘイデン・クリステンセンに変更された。
2005年、Ep.3公開。
DVD版では殆ど改変はないようだが、後半のシーンでワイプ切り替えが、瞬間切り替えになったという一箇所だけが、報告されているようだ。
5・Blu-ray版
2011年、待望のBlu-ray版が発売。日本版に於いては、まず、戸田奈津子の誤訳字幕の修正がなされた。この事は大変喜ばしい。だが映像は、とうとうEp.1のヨーダまでがフルCG化された。Ep.2では、アナキンの悪夢にセリフが追加され、Ep.3ではクローン・トルーパーたちのセリフに、軍事作戦用語が追加された。
Ep.4で、タスケン・レイダーから隠れるR2-D2の洞穴に岩が追加された。
(https://cbskool2.files.wordpress.com/2011/09/blu-ray-changes-episode-4-r2-d2-hiding-behind-rocks.jpg)
また、ハンとグリードのシーンでは、撃ち返しの間隔が更に短くなり、ほぼ同時になった。(それでもグリードの方が一瞬速い)
また、Ep.6では、ジャバの宮殿の門が巨大になったり、マスクを取ったアナキンの眼を青くするなど、更に細かな改変が行われた。そして、ダース・ベイダーが、皇帝を投げ飛ばすシーンで、“Noooo!!!”と叫ぶようになった。
6・幻の3D版
実は2005年、Ep.3公開直後に、更なるアップデートも企画された。観客の映画館離れについてのシンポジウムで、ルーカスは3D映画の推進に賛同し、全6作を3D化すると発表した。そして、Ep.1を2011年に公開し、一年毎に1作ずつ公開する…筈だった。だが、Ep.1の3D版を劇場公開した同年、ルーカスは、ルーカス・フィルムをウォルト・ディズニー・カンパニーに売却。ディズニーの傘下となり、Ep.2〜6の3D化は中断されてしまった。
(オイラの手元に残る、アナキンのゴーグルをデザインした3Dメガネはどうしてくれるんだ。)
7・新たな三部作の発表
ルーカス・フィルムのディズニー売却と同時に、新たな三部作の新作が企画され、今年2015年12月19日に、7作目となる『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が公開される事になった。奇しくも、ジョージ・ルーカスが一度否定した「3つの三部作」という構成が、実現する事になったのである。
以上が『スター・ウォーズ』の公開とアップデートの歴史である。
「公開順に観る」という苦行をしたい方に
劇場初公開版と最新版のBlu-ray版を比較すると、色調や音声に至るまで、大小様々な改変 が行われた。ルーカス・フィルムは、いちいち改変箇所の全てを発表していないが、コアなファンが確認しているだけで、全6作品中、約200ヶ所、またはそれ以上あると言われている。ルーカスは、劇場公開やソフト化のたびに「本当は、こうしたかった」と、改変し続けてきた。
改変されているので、レンタルで鑑賞するのであれば、
4→5→6→1→2→3
の順番はオススメ出来ない。
そんな訳で当連載「エピソード1」では、
4→5→2→3→6(1欠番)
この順番をオススメした次第である。
しかし、「劇場初公開版」と「特別篇」が収録された「リミテッド・エディション」を購入してでも「公開順に見たい」と言うのなら、以下の通りとなるので、参考にされたい。
・DVD リミテッド・エディション
劇場初公開版
4→5→6
↓
・DVD リミテッド・エディション
特別篇
4→5→6
↓
・DVD通常盤
1→2→3
↓
・DVDトリロジー版
4→5→6
↓
・DVDプリクエル・トリロジー版
またはBlu-ray BOX版
1→2→3
↓
・DVDオリジナル・トリロジー版
またはBlu-ray BOX版
4→5→6
以上。
この18本を見れば、公開順に見たと言う事が出来る。真の意味で「公開順に見る」とは、そう言う事なのだ。
以上のような理由から、公開順に鑑賞する事が、いかに難しいかがわかっていただけたであろう。
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おいおい、ホントにスター・ウォーズファンはこれ全部素直に観てるのかよ。よっぽど飼い慣らされたファンだな!www と思った皆さん、正解です。猪原もそう思いました。
次回エピソード4。そんな改鼠がなされ続けるスター・ウォーズサーガに対するファンの反応、そして記事執筆者であるまじさんの新作スター・ウォーズに向ける思いとは!? 明日更新です、ご期待ください!
【エピソード4に続く】
執筆:まじさん/編集:猪原賽
(参考文献・サイトについてはエピソード4末尾に表記予定)
(関連リンク)
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