- 2014年12月09日18:00
マンガ賞の概念を飛び越える!?中野発の新・漫画賞「-M.I.A.N.-」発表!

MAG(Manga Anime Geme)……とどのつまりはオタクサブカルチャーの街・中野。そんな中野文化を世界に発信する非営利団体「中野プラプラ」が、中野ならではの新・漫画賞を発表しました。
その名は「MANGA INNOVATION AWARD in NAKANO」略して「-M.I.A.N-(ミアン)」!

その賞は、開催をニュースとしてブログで扱い、私自身も客として話を聞きにいったトークイベント「漫画家の登竜門を再考する(2)」で発表されました。その詳細は後まわしにして、まずはこのトークイベントのレポートを書くので、「-M.I.A.N.-」について知りたい方はスクロールダウン・プリーズ。
トークイベント「漫画家の登竜門を再考する(2)」

前回第一弾イベントは、中野プラプラ(中野コンテンツネットワーク協会)主催で行われました。漫画家ユニット・「うめ」の小沢高広先生、小学館・月刊IKKI編集部(当時)の豊田夢太郎さん、そしてマンガに関したイベントを多く手がける「マンガナイト」代表・山内康裕さんらお三方がパネラーとして、漫画賞の過去・現在を振り返り、今後漫画賞とはどうあるべきかを提示。その内容は正直言えば、マンガ業界人としての私・猪原賽にとっては「存じ上げております」という話でした。
が、それを受けての今回の第2回トークイベント。では、そうして発掘された漫画家やマンガは、誰に育てられるのか。WEBマンガ・電子出版が隆盛して来ているこの業界、今後どのような人材が必要になって来るのか。それが中心になった今回はだいぶ興味深い内容でしたね。
今回のパネラーは……
山内康裕さんマンガを介したコミュニケーションを生み出すユニット「マンガナイト」代表。
来春オープンのジャンプ連載『ワンピース』モチーフのテーマパーク「東京ワンピースタワー」や、「立川まんがぱーく」などに関わっている。「このマンガがすごい!」選者。
レナト・リベラ・ルスカさん
ペルー出身イギリス国籍、日本在住。日本と日本の文化であるマンガ研究に関わる。
現在も明治大学でマンガ文化論を中心に講師を務める。
菊池健さん
マンガ家支援団体・トキワ荘プロジェクトディレクター。
マンガHONZライター(キュレーター)。
イベントトークの主な内容
以上の参加者は、マンガ家や出版社とは離れた、しかしマンガの周囲でマンガを盛り上げようとする「読者」代表。山内さんはマンガの「批評」と「キュレーション」の違いについてトーク。
批評とは時代性など様々な周辺事象とマンガを関連付けて語るもの、キュレーションとは単純に今面白いものを紹介すること、と定義付けます。
同様にレナトさんは海外から見た日本のサブカルチャーであるマンガは、「批評」がされて来なかったと語り、山内さんとトークセッションしながらマンガの批評とキュレーションについて、そしてマンガという文化について議論を深めて行きました。
特に興味深かったのは、レナトさんら日本のMAG(Manga・Anime・Game)に興味を持った外国人の、日本に来て騙された感という話。
海外ではMAGはオタク文化として、趣味にするとともすると虐げられる。しかしそんな文化を縦横無尽に世界に発信する日本。きっと日本ではMAGはメインカルチャーなのだと期待して来日すると、結局やはりMAGはサブカルチャーであって、いきなりガンダムの話をしても眉をひそめられることが多かったという経験談。
これだけ萌え文化、MAGが根付いた日本であっても、結局それはサブカルチャー。メインカルチャーである映画、音楽に比べれば「批評する価値もない」「二流文化」「大衆文化」とされている現状が浮き彫りに。
一方で菊池さんは、マンガHONZというサイトでマンガをキュレーションする意味や効果について、母体であるHONZの成功例など交えてトーク。
実際、山内さんも選者として参加している「このマンガがすごい!」がマンガの売り上げの左右する時代。「売れなくなって来ている」としながらも年間2万点発行されているマンガ。そうした最新のものも含め過去の埋もれた作品にも陽の目を当てるのはそういったキュレーションの役目であるとし、編集サイドもそうしたメディアと連携する形で、「マンガ編集」という業種が今後変わっていくのでは? と。
(個人的にはわたくし、それは営業の仕事じゃないかなとも思うんですがw)
ざっくり書くと以上の内容になりますが、それ以外にもリアルの本屋の生き残り方、紙媒体・電子媒体のマンガの違い、電子化時代の新しいマンガの姿等、とりとめもなく話題は尽きず、当然結論が出るものではなく、まったく時間が足りないトークイベントとなりました。
イベント後の懇親会で菊池さんともお話させていただきましたが、
「今回の観客層は半分学生さんだったので、あまり業界に突っ込みすぎた話をしてもニッチだし、逆に業界人だけで居酒屋で話せば朝までも話の尽きないテーマでしたよね」と苦笑いをしていらっしゃったのが印象的でした。
さて、ではそんな混迷極まるマンガ業界。中野というMAG・サブカルチャータウンが、新たに世に送り出す、新・漫画賞とは――
MANGA INNOVATION AWARD in NAKANO (略して)-M.I.A.N-

個人的には英語(アルファベット)ばかりじゃぱっと見意味が不明で、他に名称どうにかならんかったかと思わないわけでもないのですが……w
その賞の内容は素人がマンガ家になるための「マンガ賞」という概念を根底からぶっ壊しつつ、しかし確実に「マンガ」というジャンルに落とし込む、画期的なものになっています。

この賞の理念は……
「今まさにイノベーションが起こりつつあるマンガの『明日』を担う、新しい作り方、表現、読ませ方(観せ方)を創出するための、前例のないアワード」。
その賞、無差別級
- マンガ作品ではなく「マンガの企画・プロジェクト」も募集
- 個人作家だけでなくプロジェクトチームも参加対象
- 対象メディアも雑誌・WEBに限らず何でもアリ!
作家が一人で描いた作品だけでなく、作品未満であっても、企画だけであっても、チームプロジェクトであっても、そしてそれがマンガという表現手法でなくとも(本人がマンガだと言い張れば)審査対象。
余談ですが、それを聞いた私の頭に流れた曲は、
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「コミック雑誌なんかいらない!」――マンガみてーな奴らの存在さえも審査対象なのかなーなんて。
でもこんなざっくりと「マンガ」だと言い張れば通る漫画賞。大賞獲ったらどうなるか。あまりに”概念”が大きすぎてイメージ沸かないと思います。でも大丈夫なのです。なぜならそれは「中野発の漫画賞」だから。
受賞作品(?)は”ナカノ”が全面バックアップ
まだ、大賞賞金は決まっていません。が、主催は「中野コンテンツネットワーク協会(通称「中野プラプラ」)」。中野区とも関わりの深い非営利法人。賞金は決まっていませんが、着地点は決まっています。受賞作品は……
「新たなアイデアを求めるデジタルコミック界、出版社・企業・行政等と、アワード受賞者をマッチングし、プロデュース。継続的に支援していく」
……とのこと。まさにMAGタウン・ナカノ発の、地域振興も兼ねた事業。ヘタな結果は出せないプロジェクトになっているのです。
-M.I.A.N.-の今後
トークイベントで大々的に発表されたものの、主催である「中野プラプラ」公式サイトにさえまだ正式発表されていない「-M.I.A.N.-」。来年2015年4〜7月に募集、10月に発表。年末までにその後の展開……とロードマップが計画されているようですが……
前段でレポートしたトークイベント「漫画家の登竜門を再考する」。その第3回が来年春に予定されています。それまでにきっともっと詰めて、その際にまた、さらに詳しいプロジェクトと募集要項が発表されることを期待します。
私も中野在住のマンガ原作者の端くれとして、新人作家に限らないこのアワード。何かしらプレゼン出来るといいなと考えています。
中野コンテンツネットワーク協会 中野プラプラ
http://nakano-plapla.jp/
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