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あなたの暮らしのためになる(?)漫画原作者・猪原賽が発信する中央線ライフブログ

  • 18:00

『楽園追放 -Expelled from Paradise-』観て来た―王道と新機軸の気持ち良い融合

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水島精二監督、虚淵玄脚本。東映アニメーションとニトロプラス合作のアニメーション映画『楽園追放 -Expelled from Paradise-』を観て来ましたので、軽くレビューをば。

映画のレビューを書く度に言ってますけど、ソフトではなく、劇場で観るべきですねこれは。

ネタバレしない程度にまずは設定を確認

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なんと言ってもヒロイン・主人公のアンジェラ・バルザックちゃんのビジュアルばかりが先行して目についてしまいますが、マジでなんでそんな格好してんの? と。

作品の世界観は、西暦2400年の未来。現在の時間軸に住む我々の生活の中にも溶け込み、SF映画・アニメでもこれまで度々モチーフとなった「アバター」(リアルの自分を投影した電脳空間上のキャラクター)のさらに上を行く、完全にデータのみとなった新人類の一人。それがアンジェラ・バルザックちゃん。(CV・釘宮理恵)

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電脳世界での戦いを描くものには先行するSF作品は多いですが、『楽園追放』の世界観では、人間がその肉体を失って、データのみの存在となっています。しかし人類全てがそうなっているわけではなく、数少ない、肉体を持ったままの人類が地球に残されている。(電脳人間はディーヴァと呼ばれる地球上空の宇宙基地?のサーバ内で生活している。)
しかし地球からサーバ攻撃を受けたディーヴァは、そのハッキング犯「フロンティアセッター」が地表上にいると知り、エージェントであるアンジェラが地球に降り立つ事から映画は始まるのですが……


『楽園追放』はかなり王道SF

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アンジェラ・バルザックはディーヴァの人間。つまりデータの存在でしかない生命体。地球上で活動する為に、データ化された彼女の遺伝子情報から生成された「マテリアル・ボディ(生身の身体)」に意識を移して、フロンティアセッターの捜索に向かう。

先行する「アバター」的なSFと違う点は、最初からデータでしかない存在の人間が、事件が起きて初めて肉体を持つ。言ってみれば「アバター」側がこちらの現実世界に入り込んで来るという構図になっている。
そんな事件によって重力と物理法則に囚われた彼女の、初めて体験する地表世界の「リアル」。それは「王女様が体験する庶民の生活」的に描かれて来た、王道。
庶民の生活に触れ、新しい世界を見た彼女が、一体どんな行動に出るか――それこそまた王道的な展開で、逆に言ってしまえば「はいはい、次はこうでしょ?」と展開が読めるわけです。


”新機軸”を活かす”王道”、”王道”を飽きさせない”新機軸”

そもそもアンジェラちゃんにとっては地球地表のリアルワールドで駆使する「マテリアルボディ」こそ「アバター」。リアルな側の観客を電脳世界のキャラにどう感情移入させるのか、ではなく、リアルを知らない電脳キャラが「肉体」を持つ違和感を描くことで、現実世界ってこうだよねと気付かせる構図は、「アバター」的なSFと似ているようで、完全に逆。そこが新しい。

しかしそれを「新しい世界を知る、もの知らずの姫の物語」という王道展開ですんなり鑑賞者に納得させる。この外し方、まとめ方。さすが『まどか☆マギカ』で魔法少女の概念を突破した虚淵玄だなと。

そしてそんな彼の”新機軸”は、逆に”王道”展開に飽きそうになった鑑賞者を、驚きのスカしで揺さぶり、スクリーンに引き戻します。
私が一番驚いたのは、ネタバレしないように書くとまったく意味がわからなくなると思いますが、

主人公が存在しないのに主人公が大活躍する宇宙降下バトルシーン」。

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私達が目にするアンジェラ・バルザックはこのようにビジュアル先行で目を引くデザインの女性ですが、彼女の本来の存在は「データ」のみ。なのでこの「実体・肉体・マテリアルボディ」が無い場所でも、彼女のデータ意識さえあれば、彼女の主体はそこに存在するのです。
それが如実にわかる宇宙から地表への降下バトルシーンは妙に興奮しました。そう来たか、そうだよな。映像・カットの良さもあり、ゾクゾクするほどカッコ良かった。

ディーヴァのデータ人間と地球の実体のある人間。そんなベッタベタな関係、オチはどこに向かうかわかり切っています。が、そこに絡むのは「ディーヴァのデータ人間」という新機軸設定だけでなく、今度はアンジェラが追っているハッキング犯・フロンティアセッター。彼もまた黎明期のSFマンガ・映画で描かれているSF的な「人間」です。王道の存在です。

肉体を持つ人間・ディンゴ(今やっと名前の出て来たメインキャラw)。
データ人間・アンジェラ。
そして王道SFの悪役的な人間・フロンティアセッター。

この三者三様。彼ら各々が1対1で絡むのであれば、それはまさに王道展開。しかし『楽園追放』はそれぞれの立場が絡み、少しずつ王道からスカされます。「未来の人類・ディーヴァのデータ人間」という新機軸が、王道展開に対する視聴者の「読み」を気持よく揺さぶり、しかし安心の結末に着陸する。

いや、面白い。面白かった。気持よく劇場を後に出来る満足感。いい映画でした。


作画についても触れておく

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『楽園追放』は、フルCG作品。かわいらしいアンジェラちゃんも、カッコイイ「アーハン」(イラスト背後のロボット)も、フル3Dモデリングで作成されたキャラクターなんだそうで。
アバターやデータではない「生身」であることが重要なキーワードになっているアニメ映画作品で、キャラにまでフル3Dモデルを使う点、矛盾するようですが、これがけっこうオツなものになっています。

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例えば『マクロスF』。私は作品自体はかなり楽しく観ていましたが、正直3Dモデルでガリガリ動くバルキリーは、逆に動き過ぎて一体何をしているのか把握出来ないシーンが多かったように思います。CG作画とはいえ2Dキャラと混在すると、浮いて見えるという事もあった。
『マクロスF』が古い話だったら、個人的な事言えば実写映画版の『トランスフォーマー』でも、ロボなのに軽そうという印象が私にはあったとお伝えしておきます。

が、『楽園追放』のアーハンは、周囲の人間キャラもフル3Dモデルだからか、”浮く”ことはなく、しっかりと重厚なアクションも見え、重力も感じる。「ああ、しっかりと重量を持ったロボットがガリガリと動いてアクションしている」と、安心して観ていられました。まさに宇宙から地表への降下シーン。そこでこの安心感があったからこそ、より感激したようにも思います。


人間の3Dモデルもすごい

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そして特筆すべきは当然ながら主人公でヒロインのアンジェラモデル。もちろん必要以上に揺れるナニかにも注目ですが、髪の描写が素晴らしいと思いましたね。当然フサごとにモデリングしているのでしょうが、この長さの髪が3Dで描かれているのかと思うと、アクションシーンで胸元ばかりに注目せずにですね……ゲフ、ゲフフン。

しかしそれにしても、なんてけしからん格好なんですかね、アンジェラちゃん。電脳世界の”データ”としてなら、このSF的なタイトな衣装もわかります。が、これは地表に降りてもこのままです。星形の髪留め始め、エメラルドブルーのパーツはずっと光輝き続けています。実体である「マテリアルボディ」で地表で隠密活動。まずその衣装どうにかしろと思わないでもないのですが……

映画を鑑賞する理由において、アンジェラちゃん見たい! 地表の重力を受ける大きな丸い物体の動きを見たい! という鑑賞動機もアリです。むしろこのキャラ造形でプロモして、本編であんましこの姿でないなら、ガッカリする方も多いでしょう。その点では非常に評価出来る、「あざとい」営業手腕だなと。

――近未来の倫敦で活躍する”変身ヒーロー”シャーロック・ホームズを描く『ガンロック』。
同じようにこんな近未来SFマンガの原作を書く私ですが、このあざとさ見習いたい。逆を言えばこの開き直りが出来ないから、私の作品は売れないのだな、なんて思ったり(笑)


映画館に行ってステッカーをもらった

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『楽園追放 -Expelled from Paradise-』。その作画を堪能し、テーマにずっぽりハマるなら、ぜひ劇場で!
……と、ここまで絶賛するわたくし。実は映画の日である12月1日に1,000円で観ました。ごめんなさい。安く観て。ステッカーまでもらっちゃいました。

大人通常価格1,800円支払っても文句なしです。オススメ。


『楽園追放 -Expelled from Paradise-』
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