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あなたの暮らしのためになる(?)漫画原作者・猪原賽が発信する中央線ライフブログ

  • 18:00

【小学館じゃない!】秋田書店版「サンデーコミックス」レーベルについて考えてみた

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秋田書店のマンガ単行本レーベル「サンデーコミックス」を知っていますか?
え、サンデーって小学館だろ!? という方にお見せしたいのが、この『鉄腕アトム』(秋田書店・サンデーコミックス版)です。小学館から出ているわけではないのです。
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私の仕事場には、高田馬場という土地柄(?)、手塚治虫の『鉄腕アトム』が化粧箱全巻揃いでおいてあります。
説明不要の不朽の名作『鉄腕アトム』。いろんな出版社からいろんな版で出版されていますが、今回はこの「秋田書店」刊「サンデーコミックス」のお話です。
見てのとおり、レーベル名は「SUNDAY COMICS(サンデーコミックス)」。

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しかし、版元は小学館ではなく、秋田書店。

これは「マンガ」というものがあくまで雑誌で買われ読まれるもの、あるいは貸本という形で読まれていた時代に、秋田書店が「新書版コミックスレーベル」を立ち上げた時のもの。
今でこそ「マンガはコミックス(単行本)派」なんて人が多いですが、その昔は逆だったのです。
マンガはあくまで雑誌に掲載され、読み捨てられるものだった時代、出版社の枠を超えて、他社の雑誌に掲載されたり、貸本に掲載されたマンガをまとめて単行本にする。
その受け皿として「秋田書店・サンデーコミックス」レーベルが立ち上がったのでした。

なので「秋田書店・サンデーコミックス」に収録された作品の多くは、講談社、小学館、集英社、少年画報社、その他の各マンガ雑誌に掲載されたマンガです。
秋田書店の自社雑誌掲載作はおよそ30%というデータを出している方もいらっしゃいます。→秋田書店サンデーコミックス名称の謎と仮説

この仮説と検証をされている「零魂(ぜろだま)」の方は古本をチェックして大変詳しく「秋田版サンデーコミックス」の謎について調べてらっしゃいますので、詳しく知りたい方はそちらを参照してください。
ただし、この謎の関してはその答えは出ていません。

いろいろな仮説がある中で、私はこう考えます。(根拠はありません、あくまで想像です。)
週休二日制なんて事考えもしなかった時代、休日は日曜だけだった。
「サンデー」こそ仕事や勉強から開放されるハレの日だった。
「日曜日」という言葉だけで心がウキウキした。
だからこそ雑誌で言えば

  • 「漫画サンデー」(実業之日本社刊・現在休刊)
  • 「週刊少年サンデー」(小学館刊)
  • 「サンデー毎日」(毎日新聞社刊)

と「日曜(サンデー)」の名の付く雑誌は多く、当然それらは別の出版社のものだし、それぞれ発行されるのは日曜日ではない。
日曜日に発刊されるから「サンデー」なのではなく、「日曜日のように楽しい」「毎日が日曜日のような生活」からそれぞれ「サンデー」と名付けられた雑誌名であり、
また時代柄、商標に関してさほどうるさい事もなかったのではないかと。

だからこそ、秋田書店が「サンデーコミックス」を発刊した際も、確かに小学館では「少年サンデー」はすでに創刊されていたが、コミックスの受け皿になってくれるし、別に「サンデー」はウチが元祖というよりも一般的な単語だしな、と問題とされなかったんじゃないでしょうか。

また、上記秋田書店サンデーコミックス名称の謎と仮説|零魂でも、秋田サンデーコミックス以前に週刊少年サンデーはあったし、自社レーベルも先に発刊していたと検証しています。少し引用してみます。

小学館は「少年サンデーコミックス」レーベル(1974年~)以前にも、「ゴールデン・コミックス」というマンガ単行本レーベルを持っていた。
 (略) 
刊行開始は1966年5月であり、レーベルを持たなかったどころか、刊行時期としては秋田書店サンデーコミックスに2か月ほど先駆けている。
 (略)
「少年サンデー」「ボーイズライフ」「ビッグコミック」などの自社雑誌連載作品を単行本化するためのレーベルという性格も強く持っている。

つまり「少年サンデーコミックス」のような雑誌ごとの単行本レーベルではなく、各社「自社のマンガをまとめるレーベル」を用意していた。そこに漏れたものが一部「秋田サンデーコミックス」に収録されている状況となっており、小学館も、週刊少年サンデー掲載作のみを集めた「(少年)サンデーコミックス」を出す事など、まだ当時は考えていなかったとも言えるかもしれません。

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そして、現在も新作こそ出ませんが、版を重ねる事でまだ現役である秋田書店版「サンデーコミックス」。

私自身、秋田書店「別冊少年チャンピオン」で『ガンロック』を連載している秋田書店の作家の一人なんで、そのうち担当編集者さんにこの「サンデーコミックスの謎」について、機会があれば聞いてみたいと思います。
まあかなり昔の話なので、社長レベルじゃないとわからない話かもしれませんがw(……となると、訊く機会などほぼ無いだろうなあ)