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あなたの暮らしのためになる(?)漫画原作者・猪原賽が発信する中央線ライフブログ

  • 12:00

「漫画の読み方」マンガのコマ運びの暗黙のルールについて考えてみた

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マンガの読み方についてのアンケートです。

あなたはこの「A」と「B」。

どちらのコマ運びが自然だと思いますか?


長年培われたマンガ文化では、「A」が正解です。

しかしどう考えてもどう見ても、「B」のコマ運びをするマンガも、実際マンガ雑誌に掲載されている例はあります。


【この記事は賽の目記ポータルから転載・再録しています】


この事についてツイートしたところ、なんだかRTが1,000超えてる…………!

実際の私のツイートはこちら。





マンガのコマ運び、読み方のルールは、

  • 上から下
  • 右から左

です。

しかし実際「B」のコマ運びが雑誌に掲載されている例は、ある。

それは単純にそのマンガ家さんが、長年培われて来た「マンガの読み方」――暗黙の了解を知らないのかな、と思っていた。

しかし上記の経験をした後、編集さんの指示でそんなコマ運びにさせられてるのかな、なんても思ったりした。


ですが、私は断固「A」だろ、「B」なんて許さない!なんて言う気は毛頭ございません。


私は嫌い。自分はしたくない。その程度のものです。誰かに強いたりはしませんよ?

いや、そんな暗黙の了解でマンガを読んで来て、事実そういうルールでマンガが作られて来た以上、「B」の読み方が普通と考える編集さんには不信感を持つし、「B」のコマ運びを編集さんに強いられている作家さんがいるならかわいそうとは思うんですが。

  • 「A」のコマ運びが暗黙のルールだといつ学んだか
  • しかし今後「B」のコマ運びのルールもありうる
  • 「A」のコマ運びを知った上であえて「B」をする

マンガのコマ運びという暗黙のルールについて、これからこの短い3章立てで書きます。

興味のある部分だけでも読んでいただければ。


1、「A」のコマ運びが暗黙のルールだといつ学んだか


そもそも、マンガの「上から下」「右から左」という読み方は、私はどこで学んだものでしょう。その記憶を探って気がついたんですが、

それはその暗黙のルールで描かれているマンガを読んで来たことに加え、

幼少の頃読んだマンガに「コマの順番」を表す番号が付ってあった事に由来するのでは? と考えます。


えーと、主にアラサー以上のマンガ読者に問うのですが、昔まだ漢字も読めなかったくらい子どもだった時、マンガのコマに番号ありましたよね?

小学館の学年雑誌、特撮番組を特集したTV雑誌、「○○のひみつ」的な学習雑誌、そんな雑誌に掲載されていたマンガは、「ドラえもん」すらコマに番号が付ってあったように思うんですが。

俺、マンガの読み方コマの順番って、アレで最初学んだ気がします。


現代、10代、20代のマンガ読者は、そんな読み方の番号がいちいち付ってあるマンガ読んだ経験あるでしょうか?

おそらくそんな(今考えれば)不格好なマンガ、読んだことないのでは?


今「学ぶ」と書きましたが、マンガなんか勉強するもんじゃないです。

読む方だけならなおさらです。

読みづらい構成のマンガもありますが、そんなの「あれ?」と思って読み直すだけでしょ? ちょっとわからんくらいでも読み飛ばすでしょ?

ルールなんて暗黙のルールであって、「推奨」程度のもの。

その暗黙のルールにのっとって作家が描いてるから、そのほうが読みやすい、ということ。

私はそう思っているから、そのルールで作りたいと考えている。そういうこと。


2、しかし今後「B」のコマ運びのルールもありうる

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ただし、「A」が正しい、「B」が間違っているとされる「マンガの読み方・暗黙のルール」。

あくまで見開き構成の紙の媒体での話。


Webマンガだとどうでしょう。紙の媒体をWebに転用したものではなく、最初からWebでの公開を前提としたマンガであれば。

ページはウインドウを下にスクロールして見て行くものですよね。

下に下に伸びて行きますよね。


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これだとあまり違和感がないこと、おわかりです?


この場合は、「上から下」「右から左」は同列ではなく、そのルールの適用バランスは、

「上から下」>「右から左」となっています。


「右から左」というルールは、ページは繰るもの、右から左へ進むもの、という前提があるからこそ、「左から右」へ視線が戻るのは気持ちが悪いという心理が働くからこそのルールです。


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例えばこの「B」がおかしいとされるのは、「4」まで読んだあと、一度読んだ「3」を飛び越してページをめくる必要があるから。


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しかしWebページのように下にスクロールし続けるマンガなら、「右から左」でも「左から右」でも、「上から下」の流れで読み進められる。

ほら、問題ない。


昔、番号のふられたマンガを読まなかった若い世代、

紙の雑誌やコミックスでマンガを読むのではなく、Webページとしてマンガを読む文化に触れた人。

そんな人なら冒頭の「B」の読み方はありうる。


これは「B」の読み方けしからん!という意図ではなく、「B」の読み方もありうる、いずれメジャーになりうる、俺の持ってる暗黙のルールが通用しない読者が現れる、そんな可能性にオッサンの俺はビビッてる。そんな話です。


3、「A」の基本ルールを知った上であえて「B」をする

これはまずコマ運びの話題ではなく、3月12日のTwitterのホットワードである「イマジナリーライン」に対するプロマンガ家の反応から。






基本は基本というだけに、最初に習う「暗黙のルール」。


ゆえに、地味なんですよ。

基本って、すごく地味。


地味で読みやすいからスルッと流されちゃう。

だったら「あれ? おかしいな。読み返そう」そうわざと思ってもらう為に、あえてルールを破る。そんな演出だって、あっていい。


かかし朝浩先生の言う「気持ちのいい構図と存在感のあるキャラ」。それがより魅力的に描けるなら、あえてルールなんて破っていい。基本に忠実で地味に収まってしまうくらいなら

「B」のコマ運びは私は個人的には気持ち悪いものを感じる。

しかし、どうしても「B」のほうがいい絵が、画が入りそうだ。そういう場合、自分ならどうするか。


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こうです。

フキダシ・セリフで読者の視線を左に流します。

そしてキャラクターの顔等、印象的なものを更に左に配置します。

こうすれば、「B」のコマ運びだって充分に自然な流れになる。


最後に


読みづらいと評されながらも人気があるマンガはあります。

「B」のコマ配置をしている作品も探せば多いかもしれません。

でもそれが基本を知った上での応用だとしたら、すごい事じゃないですか。


ただし、私がTwitter上の発言で嘆いた事は、

その編集さんとのちょっとした会話が発端でした。

それを記憶を頼りに「A・B」を例にして再現すると……


(猪原の描いたネームを読みながら)

編集「私、こういうコマ、『B』の読み方をしたくなるんですよねー」

――え、「A」ですよね? それが基本ルールですよね?

編集「実は私、子どもの頃マンガ読んでなくてですね。ルールって言われても(笑)。あんまりコマの順番気にしないし、『B』で読むほうが自然じゃないですか?」

――(絶句)

編集「(もし自分と仕事するなら)ここは(Bの流れに)直してもらいたいなぁ」


それで作家さんのネームを見て、意見を言ったり直させたりするとは……と、ちょっと首をかしげてしまった。


幸い私はその後、その編集さんと仕事の縁はなかったのですが、

天然「B」脳のその編集さんに、

「A」脳のマンガ家さんが、

理由もなく彼の感覚で「B」にネームを直されていたら……

それはかわいそうだなー、そして怖いなーという事でした。


【この記事は賽の目記ポータルから転載・再録しています】


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漫画原作のゲンバ01
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賽の目記ブックス (2013-08-28)