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あなたの暮らしのためになる(?)漫画原作者・猪原賽が発信する中央線ライフブログ

  • 12:00

絵巻物から水木しげるまで!「大妖怪展ー鬼と妖怪そしてゲゲゲ」見て来た

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地下鉄三越前駅至近の「三井記念美術館」でただいま開催中の特別展、
大妖怪展ー鬼と妖怪ーそしてゲゲゲ」を見てきました。

中世から近世、そして現代まで妖怪变化の歴史を、浮世絵や絵巻で紐解く今回の特別展。

いやあ、夏ですねえ。恐ろしくて涼しくなりそうです。


もちろん館内展示物は撮影禁止なので、図録を写メって紹介しますね。

展示室1~7に分かれた展示物は、

・浮世絵の妖怪
・妖怪フィギュア
・鬼と妖怪
・江戸から明治の妖怪
・近世近代の妖怪研究
・現代の妖怪画


に分類されています。

■浮世絵の妖怪

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がしゃどくろが描かれた「相馬の古内裏」を始め、妖怪がモチーフになっている浮世絵が11枚ほど展示されていました。

特に興味深く思ったのは、歌川広重の「名所江戸百景」のうちの一枚、「王子装束ゑの木大晦日の狐火」ですね。
そのシリーズ名のとおり、江戸の名所を案内する浮世絵なんですが、この一枚だけ、現実ではありえない風景を描いているそうです。
狐火と共に集まる狐の群れが描かれているんですよ。

■妖怪フィギュア

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三井記念美術館公式サイトより)

ガシャポンや食玩でかなり精巧なフィギュアシリーズありますよね。
そんな妖怪フィギュアが陳列されてるかと思ったら、まったく違った。

狩野永納筆「不動利益縁起」に描かれた「外道を調伏する安倍晴明」を、1/2サイズで立体化した展示でした。
普段はこれ、国立歴史民俗博物館にあるもののようです。

フィギュアってレベルじゃない(笑)


■鬼と妖怪

天狗、山姥、怨霊、動物、付喪神、そして百鬼夜行とさらに細かく分類され、面や絵巻物が展示されています。

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特に面は、室町時代に作られた実際の面の数々が展示されており、図録ではわからない立体感が、生で見ると迫力あります。
この写真の「能面 痩男」が、この貧相な表情、妙に存在感があってですね……
「般若」の面も並んで展示されていたんですが、コレがゾクッとしました。

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「百鬼夜行図」も2種類展示され、こちらの写真は「百鬼丿図」とされている絵巻物。

西洋でオバケと言えば、子どもが白いシーツを被ってオバケごっこをする様子など、映画やドラマで見られますが、この図にまさにその「白い布を被った(何者かわからない)妖怪」がいたりして、正体がわからないのは怖いけど、布をかぶっているのはちょっとユーモラスだなとも思いましたね。

この「百鬼丿図」並んで進むうちに嵐の中に突入してしまう場面があり、稲妻と闇に紛れる妖怪のシルエットなども見られ、この場面がまさにマンガやアニメのようで、単に妖怪の図を描いているだけではない演出描写が興味深いです。


■江戸から明治の妖怪

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このあたりになると、江戸時代の図譜や絵巻、読本など、カラーの挿絵付き絵物語となってきます。
お歯黒べったり」「ふた口おんな」など、妖怪画として有名な、かならずどこかで見た記憶のある絵が並んでいました。

日本が世界に誇るマンガ文化、なんて言いますが、その出発点は「鳥獣戯画」とされていますよね。
しかしこのあたりになると、もう既にマンガの基本は出来上がっている、と感じました。
基本的にフィクションじゃないですか、妖怪。
誰も見たこともない妖怪を絵に描くのは、まさにマンガでいう”キャラ”絵を描くようなもの。
リアルなディテールと、サラッと絵に描くためのディフォルメのバランスが、現代のマンガ絵を見ているようで、日本人のマンガ的なセンスは江戸時代には既に完成されていたように思います。


■近世近代の妖怪研究

妖怪や怪異を研究した偉人、平田篤胤や井上円了、柳田国男らの生涯や実績を紹介するパネル展示。


■現代の妖怪画

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おまちかね、展示のトリは、「ゲゲゲの鬼太郎」を中心にした水木しげる先生の生原稿が展示されています。

って、アレ? って思いません? これ……

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■浮世絵の妖怪で展示されていた、「相馬の古内裏」と酷似しています。
そういえば、

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■江戸から明治の妖怪で展示さされていた「お歯黒べったり」「ふた口おんな」も……

見たことあると感じたのは、水木しげる先生の妖怪本の絵の記憶だ!

しかし、これをパクリと書くのは、少々脊髄反射過ぎるでしょう。
先生は「このような姿だ」と残されていた妖怪の図録は、それを元に現代風に描写しなおし、紹介したのだし、
こういった図録の残されていない妖怪については、先生の想像力で1から作り出して来ました。

その本来の姿が図に残っていない妖怪の代表といえば、「ぬりかべ」や「一反もめん」。
もはや日本人はその妖怪の名を聞いて、水木しげる先生の描く「ぬりかべ」「一反もめん」しか脳内ビジュアルに現れてこないと思います。

もし水木先生が「このがしゃどくろ、まんまトレースしたらマズイよね」と思って、ポーズを変えたり、角を付けたりしていたら、それこそ興ざめ。

現代妖怪画の第一人者、オンリーワン、日本人が怖れる怪異のビジュアルのスタンダードをたった一人で完成させた水木しげる先生だからこその「妖怪愛」をむしろ感じました。



さて、こんな数多くの妖怪の歴史に触れられる「大妖怪展ー鬼と妖怪そしてゲゲゲー」。
会期は9月1日までですが、8月5日(月)の休館日を境に前期と後期に分かれ、一部展示品が入れ替わります。
すべてを見たい方は、まず8月4日までの前期のうちに行かないとなりませんよ。ご注意!


「大妖怪展ー鬼と妖怪そしてゲゲゲー」三井記念美術館
http://www.mitsui-museum.jp/


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