- 2013年02月13日22:00
コンセプトはアート、フードはドカ盛り、メニューは全品380円、店主はダジャレ連発のイラン人!カオスな満腹居酒屋「花門」

いきなりだがこのサラダを見て欲しい。
周囲の枝豆やコーンの大きさから、ドカ盛り具合がわかると思う。
このサラダ、たった399円である。
居酒屋「花門(かもん)」。
上板橋にある居酒屋だが、いろいろカオスな店だ。

店先だけ見れば、普通の居酒屋にも見える。
料理はオール380円(税込399円)とデカデカと表示。
380円居酒屋チェーンも流行っているが、こちらはれっきとした個人経営の居酒屋。

看板からしてどこかカオスだ。
「ART居酒屋」という表記に恥じない、アート的な看板。
店内に入ると、


子どもが描いた絵が所狭しと貼ってある。
これがアートか……? と思うと、

こんな一角も。
現代絵画の本に、油絵。確かにアートだ。
そしてなにより驚くのは、この居酒屋、店主がイラン人である。
コルドバッチェ・マンスールさん。
店主であり、調理担当であるマンスールさんは、日本語が堪能過ぎてダジャレを連発。
思いついたら口に出さずにいられない貪欲さで会話に必ずダジャレをブッ込み、笑顔の絶えない店。

壁のメニューを見る。
花門ナニコレ珍メニュー
お勧め料理
・イランシシケバブ
・イラン人気ロール
・イラン風オムレツ
と表記されていたので、日本人の店員さんに
「このイラン風のオススメ3つ全部!」と頼んだら、
「4つ全部?」と返って来た。
4つ?
「『ナニコレ珍メニュー』も料理のひとつなんですよ」
わかりづらいよ!
じゃあ4つとも、あと、
「おまかせサラダとマカロニグラタンをください」
ビールを飲みながら全6品を待つことにした。



見てのとおり、イラン人が全部料理しているとは思えない、いわゆる居酒屋メニューの数々。
普通だ。すごく普通。というか無国籍。
メニュー右上のイラン料理のみが、店主の国籍をハッキリさせている。
そして料理は全品380円(税抜き)。
いやー、普通の居酒屋ですね……なんて思ってたら、全然普通じゃなかった。

「おまかせサラダです」と届いたサラダがドカ盛り。
続いて

「サラダ用のドレッシングです」って届いたのが、ボウルいっぱいのオーロラソース。
冬の野菜高騰の時期に、これ、ホントに399円なんですか……?
「ドレッシング足らなかったら言ってください、作りますから」
いえ、たぶん、充分です……。
いくら食べても減らないサラダに、あと5品来る料理が全部ドカ盛りだったらどうしよう。いや、でも一品オール380円だろ、いくらなんでも……と、同行した友人らとひそひそ話していると、

なんか届いた。
オムレツ? オムライス?
ビールグラスと比べてもらえればわかる、巨大な何か。
これが「イラン風オムレツ」か……と取り分けると、
これ、完全にフツーのオムライスです。デカイだけで。
じゃあオーダーミス? やべえ、手つけちゃったじゃん……。と皆でぞわぞわしていると、店主マンスールさんが申し訳なさそうに近づいて来る。
「オムライスじゃナカッタ? 間違ッタ?」
あ、いえ、その……と我々がまごまごしていると、
「ナニコレって思っタ? それがナニコレ珍メニューだヨ!!!!!」
としてやったりの笑顔で帰って行く。
え、ちょ、待っ……、なにこれ……?
ナニコレ!?
わざと間違ったのか、間違ったからごまかしたのか不明なまま、我々はオムライスと、まだ消えぬサラダを黙々と食べ続ける。
くやしいことに、このオムライス、ふつうに美味しい。

続いてマカロニグラタンが届いた。
レンゲの大きさでわかるだろうか。
ふつうに小鉢サイズだ。
380円居酒屋チェーンでもふつうに納得する普通のサイズだ。
サラダ、オムライスと続いたドカ盛りに、まさかドカ盛りが続くのでは……と危惧していた我々は、ホッと安心すると同時に、どこかガッカリしていたことを告白する。
よかったね、ふつうだ。食いきれるぞ、あんしんだ。
そんな会話をヒソヒソと、しかし内心拍子抜けしていた我々にまたも近づくマンスール氏。
「そんなわけナイデショ~~~!!!?」
と我々の心の声を読んでツッコミつつ、にこやかにドカ盛りマカロニグラタン持って来た。

どんぶり一杯のマカロニグラタン……!
内心ガッカリしていた我々は、ドッと笑って弛緩する。
我々にこの緊張と緩和をもたらすためだけに、この人大鉢と小鉢の2つのマカロニグラタン焼いたのか……!?
マンスール氏のお茶目かつ少々濃いキャラと、まだイラン風3品が残されていることに、我々は三たび戦慄した。
そしてまた届く。ここからはダイジェストにて。


イラン風オムレツ。
思ったほどの量ではないが、軽く3人前はあろうかという量。
スパイス風の味付けで整えられた、たっぷり野菜と固焼きスクランブルエッグと思ってもらえればよいかと。


イランシシケバブ。
キャベツの上に、こんがり焼いたひき肉、たっぷりのトマトソースをかけて。
なかなか完食といかない今までのメニューが残ったテーブルに置くことが出来ずに、写真を撮る際友人に持ってもらったが、
「重い……」と手が震えていた。
ひき肉はハンバーグよりはやわらかめで、箸で取るとほぐれるほど。
こちらもスパイシーながら、そう辛味はなく、

卓上に揃う辛味ソースなどの調味料をかけると塩梅が良い。


イラン人気ロール。
ブリトーの皮のような生地に包まれているのは、イラン風オムレツの玉子抜きのような味。
(しかし切り分けられた部分によっては、目玉焼きが入っている。)
もう比較対象しようがないレベルになっているので写真ではよくわからないかもしれないが、いわゆる節分の恵方巻きサイズのものが3つくらいの大きさ。
思い出して欲しい。
こちらのフードメニューは全品税込399円だ。
ここまでの食べ物はすべて、1皿たった399円なのだ。
いったいどこで利益を出している店なのだろう。
ドリンクで利益を確保しているのか?と思えば、ドリンクメニューだってそう高くない。
瓶ビール500円。サワー350円~。
正直食べる方に夢中で、ドリンクなんか飲んでる場合じゃない。
我々がドカ盛りメニューと戦い、なんとか完食した頃に、
そういえば口を開けば愉快なマンスール氏が静かだ。
ふとカウンターを見ると……
なにやらカウンターに座るお客さんと、人生相談を話し込んでいる。
そんな顔も見せるのか……と日本人の店員さんにお会計をお願いして待っている我々は、改めて店の壁を見る。

「コルドバッチェ・マンスール 第3回チャリティー展」
わ、アートだ。
ポスターに横顔のあるこの写真の主が、ここ「花門」の店主マンスール氏だ。

まさか、この無造作に置いてあった油絵も、彼の絵……?
愉快なダジャレ、ドカ盛り、ツッコミどころしかないメニューの数々、壁の子どもの落書き、美術品。
どれもそれぞれが自己主張しつつ、マンスール氏というキャラクターにぴたりぴたりとハマッていく。
「カオス」だなんて言葉じゃ片付かない、マンスール空間ともいうべき謎の居酒屋――「花門」。
もちろん「Come on!(カモン!)」とフリガナが振ってある。
もちろんだ、また来よう。
マーボー豆腐、チヂミ、ベーコンエッグ。これらがいったいどんな大きさで出てくるのか、気になってしょうがないし。
居酒屋 花門
東京都板橋区上板橋3丁目6-7
03-3935-9222
![]() | たまたま珍百景 テレビ朝日「ナニコレ珍百景」スタッフ 宝島社 売り上げランキング : 27805 Amazonで詳しく見る by AZlink |